それだけは確かなこと。
文庫本を片手に、
ひとり遅いランチへ。
クライマックス、
残り30ページほど。
「一人ひとりの人間が確かめることのできる事実の数は、あまりにも少ない。
それゆえ人は、多くの欠損を情報によって穴埋めし、事実と呼べるものに作り変える」
「真実なんてものは、すべて幻想なのだよ。事実そのものに力はない。あるとすれば情報の中にこそある。
情報こそが力を生み、事実を作り上げる。人々が受け入れたとき、初めてそれが真実と認知される」
でも、主人公のひとりは最後に自分に言い聞かせる。
「人が生きていく上で、最も大切なもの。
それは決して、情報などではない。
それだけは、確かだと思う」
蕎麦を食べながら、
いっきに読了。
『国境事変』
初めて誉田哲也氏の本を読んだ。
この小説の最後に展開される「情報」と「真実」。
著者の意向とストーリーの趣旨とは違う受け止め方だけれど。
そう、だからぼくはたくさんの旅をしてきた。
自分の目で見て、感じたことは、紛れもない事実であり、真実だからだ。書物やネットという、第三者が作り上げた「情報」などでは決してない。
自分が慣れ親しんだ人や文化ではない地域や国々。
だから旅先で感受する真実は、より鮮明に後々まで残っていく。
情報から作り上げられた真実ではなく、本当の真実。
それは自分だけの真実ではあるけれど、知らず知らずのうちに、その「真」の数が積み重なって、いまのぼくがあるのだと思う。
- 作者: 誉田哲也
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